ミゼット！！

　懐かしのミゼット！　ダイハツの軽三輪トラック「ミゼット」です。確か関西のお笑芸人大村昆さんが面白おかしくコマーシャルををやって居たのを思い出しました。
　私の幼馴染と言うか、大分先輩に銭湯の一人息子が居まして、愛用の自家用車でした。彼は　其の愛用自家用車で、銭湯の燃料の薪を集めに街を走り回って居ました。当時は　銭湯の燃料として薪が使われて居まして、街の木工所などから薪になる木の屑などを貰って来るのです。車体に大きく「○○銭湯」と書いたミゼットで薪を集めて回る格好は誠にユーモラスで、「先輩！コンニチハ！」と声をかけると「ヨォ！」と野太い声を返して呉れました。
　其の先輩は無類の女好きで、当時は既に「売春防止法」と言う極悪法で、赤線が廃止になって居ました旧遊郭に毎晩せっせと通っていました。然も「○○銭湯」と墨痕鮮やかに大書したミゼットに載って。だから　もう有名になって仕舞いまして、からすの鳴かない日は有っても「風呂屋のミゼット」を見ない日は無い！とまで言われました。
　ところがある日、○○銭湯に行ってみますと、其の先輩が風呂桶に腰掛けてションボリして居ます。訳を聞いてみますと蚊の鳴く様な声で、「俺はもう駄目だ！もう死ぬしかない！」と言います。穏やかでは有りませんから、根掘り葉掘り嫌がる先輩から聞き出しましたら、どうやら病気を貰って仕舞ったらしいのです。「此の事がオフクロにばれたら俺はもうお終いだ！アア～！どうしよう！？」と言って泣くのです。
　仕方が無いから「産婦人科医院」に連れて行きました。そしてペニシリンを１本注射して「ハイＯＫ！！」と先生に言われた時の先輩の嬉しそうな顔が未だ忘れられません。
　其の夜　例の場所にまた「○○銭湯」のミゼットが駐車していた、と聞いた時、もうあいた口が塞がりませんでした。