「氷川清話」は「明治維新」の事を勝海舟(1823~1899)が実体験談として、赤坂氷川の自邸で語った事柄を聞き書きしたものです。その言葉には何の飾り気も無く、明治維新前から維新後約30年間を、歯に衣着せず、私情もまじえず「俺が海舟と言う号を付けたのは、象山の書いた「海舟書屋」と言う額が良く出来て居たから、其れで思いついたんだ。と言った調子で始まり、全く屈託の無い江戸弁で、つい 面白くて読んで仕舞いました。
特に面白いのが人物評論。明治維新の時に実在して活躍した人物達を、勝海舟の視点から率直な意見を述べて居ます。
西郷隆盛から、坂本龍馬、他諸々の大勢の人々迄実に面白く語って居ます。特筆すべきは「恐ろしい人物二人」と題して、西郷隆盛と横井小楠を挙げて居ます。西郷は「江戸城無血開城」を勝海舟とたった二人で談判して成し遂げた相手です。「其の人間の大きさはとても計り知れない程の大きい男だった」と言って居ます。横井は肥後(熊本)出身の儒学者で、海舟に言わせると「外国の知識なんかは俺には及ばないが、其の思想の高調子な所は俺が梯子を懸けても及ばないとしばしば思ったよ。」
「土佐では坂本龍馬と岩崎弥太郎だ。坂本龍馬は俺を斬りに来た奴だが、仲々の人物さ。其の時俺は笑って受けたが、何と無く冒しがたい威厳が有って、よい男だったよ」
坂本龍馬が俺に「先生 しばしば西郷の人物を称せられるから、拙者も行って会って来るによって添え書き(紹介状)を書いて下され」と言ったから、早速書いてやった。
坂本が薩摩から帰って来て言うには「なるほど西郷と言う奴は、分からぬ奴だ。小さく叩けば小さく響き、大きく叩けば大きく響く。もし馬鹿なら大きな馬鹿で、利口なら大きな利口だろう」と言ったが、坂本も仲々鑑識の有る奴だったよ。
この本を読んで居ますと、まるで小柄で眼光鋭い胆力の据わったお爺ちゃんの勝海舟が、目の前にチョコンと座って話して呉れて居る様な気持になりまして、楽しくて堪りません。話題も凄く豊富で、昔の日本人論から、当時の内政論やら、尽きる所が有りません。暫く此れを読み進みながら、私なりに面白いと思った所をピックアップして、続編を書いて行きたいと思います。
2010年6月24日木曜日
氷川清話 其の1
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